ウルフヘッドの逆襲 7
ついに最終決戦である。
残るは、新しく出現した中央の塔のみ。
ここまで来たら寄り道する必要も無いので、北の塔を出て南に直進。
ただし炎に包まれた膏血城(地上エリア)は、様々なモンスターが徘徊するようにもなっている。
南下する際にサイコロを1個ふるよう指示があるので判定。
出目は4。
出目が偶数だったので、ワンダリングモンスターと遭遇。
金色に輝く巨大なファイアドラゴンが出現。
逃亡すると明後日の方へ走らされるので、仕方なく戦闘。
ファイアドラゴン ヒットポイント:17 スピード:9 体力ポイント:10 ダメージ:DD
正直、面倒な相手だ。だがウルフヘッドもまだ変身状態、戦闘力は高いのでなんとかなるはず。
戦闘開始。
パーティ一丸となって袋叩きにし、見事に1ターンキル。
ウルフヘッドの攻撃は外れたが、まぁ結果オーライ。
経験ポイント サイコロ1/2個獲得 (出目4)
取得制限は無いので、一応、このドラゴンで経験値の無限稼ぎは可能。
労力と見あっているとは言い難いが……。
ドラゴンを撃退したら、再度南下。
しかしまたサイコロを1個ふるよう指示。
出目はまたも4。
今度は炎の中から、体長3メートルほどの、胃袋に手足が生えたような怪物が出現。
これも仕方がないので戦闘。流石にドラゴンより強いという事はないだろう。
ペナングラー(吸血胃袋) ヒットポイント:11 スピード:6 体力ポイント:6 ダメージ:D
今さら1体で何しに出てきた、という能力値であるな。
戦闘開始。
ウルフヘッドとルーイーの二人が攻撃して撃破。戦闘メンバーが後3人いたが、ピクリとも動かず。
なんだったのかよくわからない戦闘を終えて、また南下。
するとまたサイコロを1個ふれとの指示。
通路一本で何回戦わせるんだ……敵ウジャウジャし過ぎ。
まぁそんな事を言っても始まらないので、サイコロをふって出現判定だ。
出目は6。経験値で出ろよ。
すると今度は、腰から下が蛇身の戦士が二人出現した。
いい加減面倒だがやるしかあるまい。
蛇の戦士(2体) ヒットポイント:13 スピード:6 体力ポイント:3 ダメージ:D
※チェンメールを装備しており、刃物の被ダメージを1軽減する。
防具があってもここまで虚弱なら問題ないだろう。
戦闘開始。
相変わらず数の暴力で圧殺。
南の塔はまだか。
そう思った矢先、またサイコロを1個ふれとの指示。
出目は2。
今度は四面四腕の巨人が武器を手に襲いかかってきた。
この通路にどんだけ敵が詰まっているのか。
四面魔人 ヒットポイント:15 スピード:6 体力ポイント:8 ダメージ:D
※プレートメールを装備しており、被ダメージを2軽減する。
こいつは上巻にいた奴の親戚なのだろう。
戦闘開始。
鎧があっても、その効果を無視できる奴が三人いるので……と、戦闘メンバー5人中、防具無視のキャラの方が多くなっていた。
三人でズタズタにして撃破。
これでようやく、南の塔が見える。
さらに南下すると、そこが塔の前だ。
入口の扉は目の前。銀の鍵を使うと、中へ入る事ができる。
さあ、いよいよ魔王と対面する時が来た!
そこ広々とした円形の広間で、中央にピラミッドの上半分を切り取ったような祭壇がある。
その手前に、銀の頭巾をかぶり、顎に長い髭をたくわえた、恰幅のいい男がぐったりと横たわっていた。
傍らに寄ってみると、男は鋭利な刃物で喉を大きく切り割られていた。ほとんど抵抗もせずに殺されたらしく、衣服には争った形跡がまるで残っていない。死んでから、まだまもないと見え、肌にはまだ温もりが残っていた。
「グリーディガッドだわ。いったい誰にやられたのかしら……」
スミアが呆然と呟いた。
黒き九つの峰周辺の諸国から魔王と恐れられた妖術師にしては、それはあまりにもあっけない最期だった。
初登場でいきなり死んでる、魔王グリーディガッド。
凄まじい肩すかしぶりに、ここで一瞬リアルに時が止まる。
斬新ではあるが……それの良し悪しに関しては、正直な記述は避ける事にする。
他に有る物といえば、上への階段のみ。
仕方がないのでこれを昇ろう。
二階には、三十人あまりの若い娘と、大勢の小さな子供たちがいた。
そしてその近くには顔見知りが。
ブーカのギャラハッドが、床に刺さった一本の剣を引き抜こうと躍起になっているのだ。
彼はこちらを見ると、一応は顔を上げる。
「君たちの来るのが遅いから、グリーディガッドはぼく一人で片づけておいたよ。サングールからさらわれてきた子供たちも、バアルの巫女にされてた娘もみんな無事だぜ」
強いNPC様がボスキャラを退治してくれてました!
やったあ!
ゲームをクリアするだけなら、このKUSO猫を放置して、さっさと塔から出るのが正解。
ただ裏設定を少しでも見たければ、ギャラハッドに代わって剣を抜いてみる必要がある。
キーNo1=1
どこにでもありそうな両手持ちの諸刃の剣だ。
装飾はごく質素で、魚鱗模様の柄には一応銀箔をかぶせてあるようだが、それも手垢でかなり黒ずんでしまっている。
ただ、若干蒼みがかった鋼の刀身だけは、霜のように輝いており、いかにも鋭利そうに見えた。
抜けずに疲れたギャラハッドが休憩した時に、剣に触れてみるウルフヘッド。
だが抜くも何も、触れただけで剣は青白い炎に包まれ、床から抜けた。
なんだ簡単じゃねえか。
そう思った読者を尻目に、剣はウルフヘッドの周りを二、三度円を描いて飛ぶと、大理石の壁を豆腐のように突き破って飛んで行った。
「……なんだい、ありゃあ」
タイタニアの呟きが読者の心情を代弁する。
一方、ギャラハッドは「よくもおれの仕事をだいなしにしたな」と叫んで、こちらに斬りかかってきた。
逃亡はできないので、戦って勝つしかない。
この戦闘はなぜか人海戦術で袋叩きにすると、罰としてペナルティを課されてしまう。ウルフヘッドがタイマンで勝つ事が推奨されているのだ。
だがこのゲーム最後の戦闘なので、気にせず全員で戦うのが攻略的には正解。
しかしまぁ、今回は残機全てを残してこれているので、ソロでもなんとかなるだろう。よってタイマンをはる事にする。
最後の興奮剤をここで使用。体力ポイントを2消費して、戦闘開始。
ブーカのギャラハッド ヒットポイント:17 スピード:10 体力ポイント:22 ダメージ:D
※チェンメールを装備しており、刃物の被ダメージを1軽減する。
当然ながら、今までで最強の敵である。基礎性能が高い分、ダメージだけはありふれた値になっているが。
ヤクでラリったウルフヘッドの攻撃はサイコロ2個で7を出せば命中。
逆に敵の攻撃は9を出さないと当たらない。
残機もあるので、まぁ問題無く勝てるだろう。
いざ戦ってみると、ギャラハッドの攻撃は空振りするばかり。
ウルフヘッドの牙はいつもより大きなダメージを叩き出し、7点や8点の威力を遠慮なくブチ込んだ。
残機どころか、薬の消耗以外は無傷の勝利である。
強いNPC様が横から活躍をかっさらう展開が、よほど腹に据えかねたらしい。
わかるよ。わからない方が良いのだが、わかるよ!
経験ポイント サイコロ2個獲得 (出目9)
なお皆で戦った場合、戦闘に参加したメンバーの数だけ体力ポイントを減らすよう指示される。
もし最後の残機で瀕死の勝利だったら、そのまま突然衰弱死してゲームオーバーだ。
タイマンをはらない奴はダチ公では無いのだ。
まぁこの猫と友達になりたいかと言われると、正直微妙だが……。
破れたギャラハッドは剣を捨てて床にうずくまる。
直後、大きな地鳴りと振動が城を襲った。
何であろう? ギャラハッドが何かしたのだろうか?
「しまった。奴の言った事は、本当だったのかもしれない」
ギャラハッドが青ざめた顔を上げて呻いた。
「奴って誰さ。この揺れに何か心当たりがあるの?」
タイタニアが叫ぶ。
「グリーディガッドの奴は、殺される前に『わしが死ねば、この城は爆発して、なかに棲む者一切が滅びる』と言ったんだ。ぼくは、命惜しさの嘘だと思って相手にしなかったんだが……」
ギャラハッドが何かしたというのは、ある意味その通りだった。
とどめを刺したい所だが、そんな選択肢は無いので仕方なく最後のトラップに挑む。
ここで「ネバーランドのリンゴ」や「ニフルハイムのユリ」でお馴染み、三桁の数字を選ぶトラップが登場。
出される絵は邪神バアルの肖像のようだ。
スミアを嫁にしようとしていた割には、あまり人間らしくない顔であるな。
この世界の魔術師は魔術を極めた者の筈だが……人間以外の種族にも「神」はいたのかもしれん。
異種族婚はファンタジー世界の華といった所か。
肖像の形と、今まで城のあちこちで見てきた絵を思い出すとわかる事だが、これは「タングラム」を組み合わせて形作られた物である。
よって形作るパーツに割り当てられた数字がわかれば、進む項目がわかるという仕掛けだ。
もちろんガキの頃のメモがページ端にあるので、解決は余裕。
二十数年の時を超えて、数字をセットだ。
激しい振動は収まった。
最後にギャラハッドと戦ったかどうかで、エンディングは分岐する。
グッドとバッドではなく、グッドとグッド+とでも言うべき分岐であり、そのプラスもギャラハッドの身の上話と剣の設定でしかないので、実は最後の戦いは不要。
ゲームに必要なラストバトルは、中央の塔へ向かう時に出るワンダリングモンスターなのだ。
今回はギャラハッドに勝ったので、そちらのエンディングに進む。
振動が止まると、ギャラハッドは詫びを述べた後、剣と自分の事を話し出す。
あの剣は伝説の魔剣カレードウルフ。
それには天地の精霊を意のままに操る秘密の全てが隠されている。
あの剣を手にした者は、新しい神となって、この天地をおさめる事さえできるのだ。
ギャラハッドはそれを二百年に渡って追い続けてきたのである。
「その剣の話は、父から聞いた事があるわ。伝説の王者の剣ね。でも実際にあっただなんて……」
スミアが呟くように言った。
「だが、ぼくはカレードウルフに嫌われたらしい。床から引き抜こうとしても、あいつはびくともしなかった。きっと、ぼくには王者の値打ちがないって事なんだろう……」
自嘲気味に言ったあと、ギャラハッドはあなたをじっと見上げた。
「きみは気に入られたらしい……。ぼくはずいぶんカレードウルフを追ってきたが、あいつがあんな動きをしたのは初めて見た。剣と女の子は気に入らない奴には鼻もかけないが、気に入った相手からはわざと逃げてみせるもんだよ……。追いかけてはみないか、きみなら新しい神になれるかもしれないぞ……」
なかなか壮大な神話が広がってきた。
しかし彼の女性観には少々疑問もあるな。
彼の言うとおりなら、スミアもわざとガーゴイルに攫われてこの城に来たのだろうか?
まぁそんな事はどうでもいいので、うなだれたままのギャラハッドを残し、ウルフヘッド一行は塔を出る。
火災もいつのまにか収まり、怪物どもも姿を消していた。
そういやアクセルの酒を補充できるポイントを思い出せなかったが、どこだったんだろうな。
そう考えていると、地平線の彼方には、夜明けの光が……。
もしかしたら下巻は一晩内の出来事だったのかもしれん。
半日で強敵と連戦串団子する戦い、聖闘士のごとし。
悪魔の笛を吹くと、デビルバードの群れがやってきた。
アイボール亡き今、サングールも蘇っているだろう。何時の間にか死んでたグリーディガッドよりも、奴の方がよっぽど脅威だったかもしれん。
デビルバードに乗れば、子供たちや巫女にされていろいろ搾られていた娘たちとともに、サングールへ簡単に帰る事ができる。
狼男を連れて帰ってくる娘を、王様がどんな反応で迎えるのか、正直ちょっと興味があるな。
「王様の元気な姿が、早く見たいでしょう?」
タイタニアがスミアの肩にとまって訊いた。ビロードのような瞳の娘は微笑みながら頷くと、そっとあなたに寄り添った。
その、ほのかな体温を二の腕に感じながら、あなたは、やがておとずれるだろう新たな冒険の度に、心を馳せていた。
赤い塔の壁を突き破ったカレードウルフは、はるか西をさして飛び去っていった。
ヘルドア湿原の西には広大な西部樹海があり、その先には荒涼とした砂漠が海岸線まで続いている。そこでは、いったいどんな危険が待ち受けているのだろう。あの青く燃える剣に再び出会う事はできるだろうか……。
と、そのとき朝風がスミアの髪をなびかせ、あなたに甘い香りを運んできた。
いまは、素直にこの朝を喜ぶべきだろう。どんな勇者にも休息は必要だ。
と、伝説を追う壮大な浪漫を予感させながら、この物語は幕を閉じる。
もしかしたら続編の構想があったのかもしれん。
最後はその前ふりだったのかもしれん。
だとして、それは叶わなかったわけだが、結果的には幻想世界の住人たる主人公が行くであろう果てしなき物語を感じさせるではないか。
主人公や神々の、どこか古い神話の風味も相まって、個人的に同作者の作品で最も評価しているエンディングである。
(終)
ウルフヘッド
ヒットポイント 16
スピード 7
パワー 9
ファシネーション 8
体力ポイント 15/17
経験ポイント 18(消費152/獲得170)
武器
蛮刀 材質=鋼 重量=5 ダメージ=d+2
剣 材質=銀 重量=6 ダメージ=d
鉄槌 材質=鋼 重量=8 ダメージ=d+3
防具
赤銅の盾 重量=4 効果=被ダメージ1点減
仲間 スミア ジャレス ブラウ ルーイー アクセル ベアード タイタニア ウータン
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